見出し画像

【ハヤシ教頭】小中学生の地域貢献活動が社会にもたらすものとは?



 10月中旬、肌寒さを感じさせながらも、水色の晴れ空が広がる午後の時間帯に、小中学生がそれぞれ自分の自治会に集まり、自治会長をはじめとする地域住民と共に、地域貢献活動を行いました。活動内容としては、事前に代表中学生が自治会長宅にお邪魔して、打ち合わせた内容であり、主に清掃や修繕などの美化的なものがほとんどです。
 一見、昔からあったような取組のようにも感じられますが、ここ数年このように全国的に小中学生が地域と共に活動したり、地域から自分たちの取組を見てもらったりする動きが加速しています。

なぜ地域と子どもを結びつかせる必要があるのでしょうか??

 その子どもが大人になってどうなったか?!を追跡したものを蓄積したデータがないため、仮説ですがちょっとかんがえてみました。

1 地域全体で防犯意識を高めるため


 核家族世帯が増え、一昔のように、定年・引退した「じいちゃん、ばあちゃん世代」と子どもとのかかわりが減少する傾向にあります。厚生労働省の調査によれば、三世代世帯の割合は平成元年で15.3%で、そこから増えることなく減り続け、平成28年で5.9%になっています。
 何が起こるかといえば、「子どもは学校、親は仕事」で地域内の横のつながりが薄まり、極端なことを言えば、「同じ地域の近所の人でさえ、何を考えているかよく分からない、場合によっては危険な人」と感じてしまう可能性さえあるということです。実際に日本各地でご近所トラブルは少なからずあるといった状況です。
 このことからも、地域と共に活動したり、日頃から見てもらう機会を増やしたりすることで、いわゆる「顔なじみ」となり、そうすれば地域住民は、少なくとも互いにどこの誰かもよく分からない人ではなく、関心あるご近所さんであると。そのため、万が一の事件事故にたいする防犯意識が高まり、子どもも大人も助け合いながら暮らしていけるような社会になると考えることができるかなぁ、とも思います。
 ネットでワールドバリューサーベイを眺めていたら、日本人の自由と平等と安全に関わる比較データを見つけました。そこには、日本人は「自由:平等」では57.2%:34.2%で自由を求め、「自由:安全」では13.6%:82.3%で安全を求めるとありました。つまり「安全」は日本人にとって非常に重要なファクターだと考える人が多いと。したがって子どもを中心とした地域交流には価値があるような気がしています。

2 子どもが自立する力を高めるため


 これもワールドバリューサーベイを眺めていて知ったことですが、世界77国と比較して、日本人が子どもに身につけさせたい力として、「決断力・忍耐力」が63.3%で2位、「想像力・創作力」が40.3%で7位、「自主性」が60.2%で19位と高く、反対に「従順さ」や「勤勉さ」は下位となっているようです。どうやら今の日本人は、「そんなに真面目でなくて良いから、自立しろ。とにかく自分で考えていろいろ挑戦していけ」という風潮にあるようだということらしいです。
 地域には様々な大人がいて、密接に繋がることで、そこからは学校では教わらないようなknow-howを獲得したり、普段できない体験ができます。どうしても、人は同じ空間、同じ活動、同じ人間関係の中にいると、安心と安全を手に入れやすいですが、良くも悪しくも慣れてしまうんだと思います。より多くの非日常に触れると同時に、その非日常と思われるような別世界にも多くの「日常」がありふれていると体感し、知ることができる。さらに云えば、慣れない大人と過ごすため、緊張感が生じやすく、「ほどよい緊張感のなかで、まずは自分の力でなんとかしなくてはならない」と考える思考のクセが身につくような気がします。結果的に、若いうちからより多くのことを考えるクセをつけることができ、ある意味自立した人間に向けた成長速度が上がるんじゃないかという気がします。

3 地域と子どもとがwinwinの関係になれるため


 上記のことが実質的にかなうのであれば、地域のメリットとしては、将来的に若い人材が育ち、地元に根付いてくれるかもしれない。仮に都会に進出しても学生時代の地域の思い出が胸に残り、いつか地元に会社を設立し経済流通を良くしてくれたり、地域に密着しながら、例えば福祉を必要とする方々に喜んでもらったりするような貢献人になるかもしれない。
 学生側から見たメリットとしては、地域の大人から知らないことを豊富に学んだり体験したりしながら家や学校では教わらない知識や経験を獲得し、自信を持って毎日を送ることができるかも知れない。もしかしたら、自分の居場所が一つ増えて安心できるかも知れない。
 双方としては、万が一に発生する災害時や緊急時に対しても地域ぐるみで助け合い、そのおかげでもしかしたら多くの命が救えるかも知れない。


と、こんな感じで理由付けをすることができそうです。
 ぱっと見、winwinの関係で、地域と子どもの結びつきは、特に地方にとっては完璧な未来を約束しているようにも思えますが、結局の所これからを担う当の本人、つまり子どもたち自信が、そう思えるようになることが重要なのだろうと思います。その前に、大人たちがそう思わなければ子どもには到底伝わらないかもしれませんが。けれど、現場で働く者の実感としては、少なからず地域と結びつくことにやりがいを見出したり喜びを感じている子がいることは確かな気がしますね。

みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!